パーソナルカラー研究会からのお知らせ

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2004年4月9日(金) 「ひなまつり講演会」

パーソナルカラー研究会

〜2004年3月3日 ひなまつり講演会〜

     「伝統と現代の色」

ファッションデザイナー コシノジュンコさんの講演会から

 ファッション界の第一線でご活躍のコシノジュンコさんをお迎えし、色彩についての興味深いお話しを伺いました。会員お二人に素敵な感想を頂きましたので、ご紹介いたします。

 
 「色」と「デザイン」の関係に思う             久保田 覚

 花曇りの弥生三月雛祭り、あつかましくも女性の祭事に参加させて頂きました。
 コシノジュンコさんがお話された中で、丸は宇宙、太陽、自然であり神様が創ったもの、四角は合理的であり人間が考えたもの、それは、男と女、昼と夜、光と影、東洋と西洋、などのように万物は常に二つが関わってバランスがとれている、という考え方はとても共鳴出来るものでした。例えるなら、丸は似合う「色」であり、四角は似合う「デザイン」であり、パーソナルカラーにも当てはまることではないでしょうか。
 伝統芸能豆辞典に観る江戸の色彩はとても美しく、歌舞伎十八番の各々場面で登場する、助六由縁の江戸桜の漆黒と緋色、鉢巻の紫、江戸の大衆色としての藍色、暫(シバラク)の柿色など、適材適所にデザインと色の調和が保たれています。建築が時代背景やライフスタイルに適応するために様式を変え、衣服もまた着物から洋服へと機能性・快適性を求めて変化してきましたが、カタチあるものは時代の求める「デザイン」と共に「色」を伴って表現され、それは表裏一体のベターハーフの関係であると言えるでしょう。パーソナルカラーは、似合う「色」を見つけるだけではなく、イメージを含めて似合う要素を提案していくことでお客様の魅力をより一層引き出すことにありますから、「色」と「デザイン」のバランスはとても大切なことであると思います。色だけ似合っていても時代に合わないデザインは傍目から見てもおかしく、似合う色は流行のデザインとバランスがとれてはじめて美しいと感じられるのではないでしょうか。男性は現実の目の前に有るモノのカタチ「デザイン」を信じ、女性は夢のようなオブラートに包まれた「色」を大切にしています。コシノジュンコさんが言われるようなバランスの大切さを考えるならば、女性も男性も関係なくして共にこれからのパーソナルカラーを見つめていく必要があると思うのです。




 コシノジュンコさんをお迎えして              加川 映子

 日頃草木染めなどの洋服やインテリアを企画している私にとって「歌舞伎の色、助六の黒と朱の着物の粋」から始まったコシノさんの講演は大変興味深いものでした。
 世界的デザイナーとしてファッションを生み出しているコシノさんのベースには常に「日本らしさとその美」を意識していらしたという姿勢に感銘いたしました。
 日本の風土・歴史から生まれた日本の伝統美は西洋にはない「空間的余白の美」に代表され、伝統色の一つの藍染めは「JAPAN BLUE」と呼ばれ、西洋からは「憧れの色」であることを知らされました。
 スクリーンで見せていただいた藍染めのファッションショーは、ため息が出るほどシンプルで神秘的な美しさを醸し出していました。
 モデルが登場するドアのイメージも西洋の固い扉のイメージからは程遠く、季節の風をくぐらせるかのように長くてやわらかい「麻のれん」を用いているのです。ある時はそれが障子であったり、襖であったりしてもおもしろいだろうに・・と、思い巡らすうちに改めて日本のインテリアの素晴らしさを痛感してしまいました。
 長い鎖国から開放された日本は隣国や西洋の文化に憧れ、急速に取り入れてきましたが、コシノさんはファッションデザイナーという仕事を手段として、日本の大切な文化、日本人の心を表現されてきたのでしょう。大好きという黒と赤の配色は助六の衣装の色でもあり、朱塗りの切溜に使われる黒と朱赤の美しさであるという。ここにまた「制限された色」の美しさを教えられました。そして、これからのテーマとして掲げる「どうやったら日本が美しくなるか」という試みとして、景観色彩の観点から「日本郵政公社」に設置される自動販売機の色を日本語の色(こげ茶・抹茶・濃緑・芥子・臙脂)で提案されたというお話がありました。本来、看板や自動販売機などはとにかく目立つ色でなくては!という考え方が先行し、環境との調和や日本らしさなどは度外視されてきたように思います。その結果が今の日本の現状ですから、しかりです。今回の講演の中でスポーツのユニフォームや相撲の若・貴兄弟の浴衣のデザイン制作などのお話もありましたが、そのそれぞれの裏付けの確かさ、イメージの豊かさにコシノワールドを十分に感じ取る事ができました。

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日本色彩学会
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